こんにちは。サイエンスライターの伊原です。緊急事態宣言を受けて引きこもり生活を続けています。
伊原の失敗談
コロナウイルスの感染が広まるにつれて、ドラッグストアなどで消毒液・除菌グッズの品薄が続いています(執筆は4月19日です)。消毒液・除菌グッズを求める人が多いためか、ドラッグストアや雑貨屋、ネットショップなどでは、普段見かけなかった除菌グッズが販売されていることを見るようになりました。
しかし、本当に除菌効果があるのだろうか…、と疑問に思うこともありますよね。3月初め、私(伊原)も、ランチの帰りに「アルコール除菌 緊急入荷!」と書いてあるお店があったので、これだ!と思って買ったものの、帰ってよく見ると、アルコールは清涼剤としか入っていませんでした(エタノール濃度の記載なし)。1本千円を超えてたのに…これでは除菌の効果はないでしょう。高い勉強料となりました…。
ネットショップでも、商品説明でアルコール除菌を強調しながらも、実際にはエタノール濃度が低く他の消毒液も入っていない、詐欺すれすれではないか、という商品も見かけます。では、どんなところに気をつければいいのでしょうか。
消毒液の種類
消毒薬といっても、いろいろな種類があります。その効力に応じて、高水準、中水準、低水準に分けられます。一般に私たちが使うのは、中水準や低水準に分類されるものです。
高水準消毒液(グルタラール、フタラール、過酢酸)
あらゆる微生物に効果があります。
医療器具などに使用されます。一般に使うことはないでしょう。
中水準消毒液(次亜塩素酸ナトリウム、エタノール、ポビドンヨード、クレゾール石けんなど)
ほとんどの微生物に効果があります(細菌芽胞を除く)。ただ、どの微生物にどの程度効果があるのか、は各消毒液によって異なります。
次亜塩素酸ナトリウム(ハイターやブリーチなどの塩素系漂白剤)は、あらゆる微生物に効果あり、です。
次亜塩素酸ナトリウム、エタノールともに、コロナウイルスに効果があると言われています。
低水準消毒液(塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなど)
一部のウイルスや一部の細菌に効果があります。どの微生物に有効なのかは、それぞれの消毒液によって異なります。
→塩化ベンザルコニウムは、コロナウイルスに対して効果が十分に得られない
と考えられています。参考までに下記を。ただし、エタノールなど他の消毒液を組み合わせている場合もありますので、商品説明をよく読みましょう。
参考 SARSコロナウイルスに対する消毒剤の適用(例)感染症情報センター
アルコール(エタノール、イソプロパノール)は、濃度に注意
コロナウイルスには効果があり(ノロウイルスなどには効果が十分でないので、微生物によります)
注意すべきは、その濃度。医療用としては、
「エタノール濃度が原則 70~83vol%の範囲内であること」
が求められます。濃度は低すぎても高すぎても効果が薄れるため、濃度が高い場合は、水で薄めましょう。
消毒用にエタノールを購入する場合は、その濃度を確認することを忘れずに!(私のように失敗しないようにしてください…。参照:失敗談)
上記の濃度は、体積濃度です。重量濃度を表示している商品も見かけましたので、間違えないようお気をつけて。
また、4月10日には、厚生労働省がやむおえない場合、お酒などの高濃度エタノール商品を代替品として使うことは差し支えないという通達を出しました。
企業が続々と支援に乗り出しており、該当しそうな商品は、
- 「アルコール77」(菊水酒造)
- 「砺波野スピリット77%」(若鶴酒造)
などがあります。
ただし、実際に使用した場合の影響がわからないということで(消毒用以外の製品は)一般家庭にはおすすめしない、と厚生労働省はいっているようですので、自己責任でお願いします。
またアルコール消毒は手荒れを引き起こしがちです。消毒後は、保湿などを十分に行いましょう!
あと、アルコールが揮発して危険ですので、使用の際は火の気に十分気を付けましょう!
次亜塩素酸ナトリウムは、物の消毒には最強だけど、手指は×
塩素系消毒剤(ハイター、ブリーチなど)です。次亜塩素酸ナトリウムを濃度 0.05% に薄めた上で、拭くと消毒ができます。
ハイターの場合
水1L に商品 25mL(キャップ 1 杯)
でOKです。
注意事項は
- ・手袋をつけること
- ・金属は腐食することがあること
- ・換気すること
- ・混ぜるな危険!
です。ノロウイルスにも効果があるので、物に対しては最強です。手すりやドアノブなど拭き拭きしましょう。
日光や熱で有効成分が分解されてしまいますので、薄めたらすぐ使うのがおすすめです。
手指には使えません。また、スプレーなどにはせず、吹く形で使いましょう。
下の次亜塩素酸水とは別物なので、空気清浄機に入れての使用はダメです! 吸わないように気をつけて!
次亜塩素酸水は、より安全だけど、保管には注意
一部の自治体でも配布されているという「次亜塩素酸水」。次亜塩素酸ナトリウムとは違うもの!
コロナウイルスにも効果ありとされています。
次亜塩素酸水は、専用装置で塩酸や食塩水を電気分解して作成され、これまで食品やドアノブなどの消毒に使われてきました。
一般向けで使われる多くは、微酸性次亜塩素酸水(p H5.0~6.5)で、有効塩素濃度は10~80ppm。
反応するとすぐに水になるため、手や口などについても大丈夫で、うがいに使われることもあるそうです。
その点、次亜塩素酸ナトリウムとは違って扱いやすいですね。ただし、反応しやすいことは同じですので、
- 日光や熱によって、成分が失われやすいので、保管に注意!
- 長期の保存にはあまり向きません
効果を失わないように、保管には注意しましょう。
ただし、次亜塩素酸水は、薬事法の認可は受けていないため、消毒や殺菌効果をうたうことは現状できず。また手指への使用も製品によって扱いが違う(良いとするものも、推奨しないというものもある)というちょっと宙ぶらりんな状況です。
専用装置は、十分な効果が得られる濃度で作成されるように調整されているとのことなので、その場合は濃度を気にしなくても大丈夫です。ただし、専用装置で作られたものでない場合は、濃度なども気をつけて説明を見てみましょう。
次亜塩素酸水といっておきながら、次亜塩素酸ナトリウムを使っているという、偽物商品もあるようなので、その点はお気をつけて!(それは、ハイターと同じものです…)
(粉末も登場しているようですが、粉末については様々なものがあり、伊原自身調査中です)
今後、コロナウイルスへの効果のほどが試験予定
4月15日、経済産業省とNITEが、
- 「次亜塩素酸水」
- 除菌用ウェットティッシュに含まれる「第4級アンモニウム塩」、
- 台所用洗剤などの「界面活性剤」
がコロナウイルスに効果があるかどうか、試験すると発表していますので、実際のコロナウイルスへの効果のほどは、今後、詳しく明らかになると思います。
コロナウイルス対策として、消毒薬はよく選んで書いましょう。
最後に、厚生労働省は、手洗いを十分に行うことが最も大切だと説明していますので、基本となる手洗いをしっかりすることを忘れずに!
また最新情報が入り次第、記事を書きたいと思います。