地球温暖化は、あまり自分たちには関係ない、と思う方も多いでしょう。確かに、例えば氷河が溶けて海面上昇するという話を聞いても、なんとなく身近に感じにくい、ぴんとこないな、と思われる方も多いかもしれません。
しかし、地球温暖化の影響は私たちの生活に大きく関係するものだ、そう思わせる発表が2019年の年末にありました。
コシヒカリ、低品質の米の割合が2倍に!?
2019年12月、茨城大学と茨城県農業総合センターなどの研究グループが、これまでのペースで地球温暖化が進むと、2040年代には、「コシヒカリ」の白未熟粒が2010年代の2倍に増えると予測しました。
一般に、米は穂が出て約2週間の時期に26〜27度以上になると、白くにごる白未熟粒が増えるようになり、白未熟粒が増えると米の検査等級が下がってしまいます。いわゆるおいしさが減ってしまうのですね。
例えば、21世紀末までに気温が4度上昇するような地球温暖化が進むとします。すると、2040年代には全国平均の白未熟粒発生率が12.6%と、2010代の6.2%と比べて2倍以上に増える見込みだ、ということがわかったそうです。それによって1年間で442億円も損をするという試算も合わせて発表されました。
ちなみに温室効果ガスの排出量がパリ協定の目標量に抑えられると、2040年代の発生率は10.9%となり、少し低くなるそうです。それにしても、影響は大きいですね。
パリ協定では、2050年までに、世界の温室効果ガスの実質排出量をゼロにすることを目標にしています。産業を行う限り、温室効果ガスは排出されますが、その代わりに植林をしたり、ガスを閉じ込める技術を開発したりして、「実質ゼロ」とするわけです。それによって、温度上昇を1.5度以内に抑えようとしています。
しかしこれはかなり厳しい目標です。各国がそれに向かって目標をあげていますが、本当にそれが実現できるのか、というと、現在の技術では正直、厳しいでしょう。そのような厳しい目標をクリアしたとしても、コシヒカリのおいしさは減ってしまう見込みなのです。
コシヒカリは寒さには強い?
そもそもコシヒカリはおいしいだけでなく、比較的、耐冷性が高いことで知られています。寒さに強い性質も、日本では重要です。
実際に、1980年代に起きた冷害によって東北の「ササニシキ」が甚大な被害を受けて、日本全国が深刻な米不足に陥ったこともありました。そのときには、外国から米を緊急輸入して乗り切りました。そのときばかりは、粒の細長いインディカ米を食べた、という人もいるでしょう。食べ慣れないインディカ米をどうおいしく食べるか、カレーならよいとかいろいろレシピが出回りました。なつかしいです…。
さて、1980年代の大規模冷害があってから、東北地方ではめっきりササニシキの栽培が減ってしまいました。今では「ひとめぼれ」の栽培が多いようです。昔はコシヒカリかササニシキか、といった形で、スーパーでどちらもよくみかけましたが、今ではササニシキを見かけることは少なくなりました。
冷害の影響もありますが、日本では、寒さに強い品種改良は昔から盛んに行われてきました。結果、今、北海道が全国でも有数の米の産地となっています。「ゆめぴりか」「ななつぼし」「ふっくりんこ」など北海道のブランド米をみなさんも聞いたり、食べたりしたことがあるでしょう。
今後は、日本でも地球温暖化の影響による温度変化を予測して、食味のよい高温耐性の品種が開発されることになるのでしょうね。新たなブランド米が登場に期待したいです。伊原は無類のお米好きなので、おいしい新品種の登場を心待ちにしています。