2019年1月24日、「南海トラフ」沿いの地域で、今後30年以内に津波が来る確率を政府が初めて発表しました。
南海トラフとは、静岡県の駿河湾から九州の東方沖まで続く、フィリピン海プレートとユーラシアプレートが接している海底の溝のことです。
初めて各自治体ごとの津波確率を発表
南海トラフ沿いでは、これまでこれまで約100~150年間隔で繰り返し発生してきました。前回、南海トラフ地震が起きてから70年以上が経過していて、そろそろ次の南海トラフ地震が起きてもおかしくない、と考える研究者が増えてきています。
政府の地震調査委員会は、発生する可能性が高いとされるM7.6~9.0の地震が起きた場合の津波を想定、震源域などを変えた約35万通りの津波を計算し、352市区町村ごとに確率を算出しています。その結果、海岸で高さ3メートル以上の津波が押し寄せる確率が、もっとも高い「26%以上」となったのは、10都県71市区町村に上りました。
実際の予測地図。津波高3mの場合、津波高5m、津波高10mの場合
言葉で言われてもなかなかイメージがつきにくいですね。津波の発生確率を示した地図は下記の通りです(ちょっと見にくいでしょうか)。
津波高3mの確率
今後30年以内に南海トラフ沿いで発生した地震で、津波高が3m以上になる確率です。紫色部分が26%以上の高確率の場所です。広い範囲で、高確率であることがわかります。
津波高5mの確率
続いて、津波高5m以上になる確率です。
26%以上となる高確率は、さきほど同様紫色の部分です。震源域付近では、津波高が5m以上も高確率となると予測されています。また地形の特徴によっても、津波の高さの予測が異なることがわかりますね。
津波高10mの確率
続いて、津波高が10m以上になる確率です。
これをみると、10m以上となる確率が高い紫色の地域は決して多くないことがわかります。とはいえ、10mの津波というのは、甚大な被害をもたらしますし、多くの建物が飲み込まれる高さですので、確率が高い地域は、注意が必要です。
それぞれ自分の住む自治体はどうなのか、と気になる方は、市町村ごとの表が発表されていますので、ぜひ地震調査研究推進本部の発表する資料を確認してみてください。下記のリンク先に資料があります。(地図も資料内にありますので、詳細を見たい方は、リンク先のPDFを見てみてください)
津波の威力はどれくらい? 2mで木造家屋は全壊
普通の一般的な波の高さを考えると、津波の高さ1mなどは大したことがないのでは?と思う方もいるでしょう。
しかし強い風で表面の海水が動く波浪とちがって、津波は海底から海面まで、海水の塊が襲ってきます。そのため、少しの高さでも大きな被害をもたらすのです。津波高が0.2〜0.3mでも、人は巻き込まれると歩けなくなってしまいます。
木造家屋は、津波高1mで壊れ始め、2mとなると、全壊してしまいます。5mを超えると、鉄筋コンクリートのビルさえ、危なくなっていきます。10mという高さがいかに怖いか、わかっていただけたでしょうか。
ちなみに、2011年3月11日の東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)では、岩手県大船渡市の綾里湾で遡上高40.1mを記録しました。遡上高とは内陸へ津波がかけ上がったときの高さです。
それまでは、1896年に起きた明治三陸津波で、推定遡上高約38.2mが最大だと考えられていました。こちらの記録も現在の岩手県大船渡市です。とはいえ、過去の津波の高さは、あくまで推定です。これまで日本各地で、巨大津波が襲ってきたと多くの研究者が考えており、南海トラフでも過去巨大な津波が襲ったのでは、と歴史的な研究も続けられています。