2018年は,大型の宇宙探査機の打ち上げラッシュです。中でも、NASAの太陽探査機は注目です。
NASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」
2018年8月12日,フロリダ州のケープカナベラル空軍基地からデルタIVヘビーロケットに搭載され,NASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ(Parker Solar Probe)」が打ち上げられました。
探査機の名前パーカー・ソーラー・プローブは,太陽風を理論的に考案したユージン・パーカー博士(Eugene Newman Parker)にちなんで命名されたものです。ちなみにパーカー博士はご存命(91歳)で,博士自身もこの打ち上げのようすを見守ったそうです。自分の名前がついた探査機の打ち上げを自分の目で見られるなんて! そんなこともあるんですね。夢のある話です。
「ユージン・パーカー Eugene Newman Parker 」はどんな人?
電磁流体力学を研究する理論物理学者です。1927年、アメリカのミシガン州生まれ。1951年にカリフォルニア工科大学で博士号を取得。1957年シカゴ大学助教授、1962年から同大学教授を勤めました。1958年に、それまでの常識を覆して、太陽から常に超音速でプラズマが流れ出ていることを理論的に予測して注目を浴びました。博士の予測はその後、人工衛星によって実際に観測が行われて、その正しさが証明されたのです。それがいわゆる「太陽風」です。今では当然のように存在が知られた太陽風ですが、それも博士の功績があってこそだったのですね。博士の理論は、太陽風だけでなく、地磁気嵐や太陽磁場の起源、太陽コロナの活動、彗星の尾の吹き流しなど、太陽と宇宙に関わるさまざまな現象解明に、大きく寄与してきました。1989年にはアメリカ科学賞、2003年には京都賞を受賞しています。
初めて太陽のコロナに突入予定。謎の解明なるか
打ち揚げ後,順調に運用中のパーカー・ソーラー・プローブは,太陽の周りを7年で24周する計画です。運用の一番の見どころとも言えるのが、最大600万kmまで太陽に接近する予定だということでしょう。これは過去の探査機を見ても最接近となります。
パーカー・ソーラー・プローブは、これまでになく太陽に近づくため,熱対策も万全です。探査機は厚さ約11cmもの断熱シールドに覆われており,約1400℃の高温でも機内が守られるように設計されています。近づくことで、これまで得られていなかった太陽のより詳細なデータの取得にのぞみます。
太陽というと,私たちにとってほとんど毎日目にする身近な天体の一つですなので、ほとんどのことはわかっているだろう、と思うかもしれません。でも実は、まだまだ多くの謎が解明されていないのです。例えば……
- 表面温度は6000℃ほどなのに,外層の大気「コロナ」はなぜ100万℃以上にもなるのか。
- 太陽風はなぜ秒速数百kmまで加速されるのか。
- 太陽磁場はどのように変化するのか。 などなど
これらの謎にパーカー・ソーラー・プローブは挑もうとしています。
パーカー・ソーラー・プローブは史上初めて,コロナに突入して観測を行う予定です。きっとこれまでにないデータがぞくぞくと得られることでしょう。新しい成果が届き次第,紹介していきます!
日本の太陽観測衛星といえば「ひので」
近年の日本の太陽観測衛星といえば、2006年9月にJAXA内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられた「ひので」があります。可視光、x線、極紫外線という3種類の望遠鏡で、太陽のダイナミックな姿をとらえてきました。設計寿命は3年とされていましたが、いまだ運用が続けられています。