2月、家の近くで、コブシの冬芽を見つけました! このもふもふした見た目、見るからにあたたかそうです。そして、光が当たると銀色に輝いてとってもきれいです。私自身、寒い季節はついつい周りを見ずに歩いてしまいがちで、ふとしたときにこぶしの冬芽に気がつくと、冬真っ只中なのですが、もう少しで春かな、とちょっとほっこりします。
蕾(つぼみ)を毛で覆って冬を越す
コブシは、モクレン科モクレン属です。日本原産で寒さにも強いので、よく公園や道路脇などに植えられていて、見る機会が多い樹木です。
広く全国的に自生しており、よく見られますが、日本だけでなく、韓国の済州島にも生息しています。
モクレン科はもふもふとした冬芽をつけるものが多いです。蕾(つぼみ)が毛をもつ萼片で覆われて、もふもふの姿となっています。この状態で、休眠して冬越しをします。日本のコブシは1月くらいからもふもふとした冬芽が見られ、3月〜4月には萼片が開いて蕾が外に現れます。
レモンの香り? こぶしの花
蕾が現れると、すぐ後に、10cmほどの白い花が咲きます。花弁は6枚です。
コブシの花はよく「レモンの香りがする」と言われますね。(うーん。でも、伊原はこぶしの花はレモンの香りだな、と思ったことがありません…。いい香りだなと思いますが、ことばにしにくい! そしてこぶしの花が咲くころは花粉症の季節なので、匂いがわかっていないのかも…。)
こぶしの花が咲くと、春の始まり、とされていて、花が咲いたら豆をまく、サツマイモを植えるなどのように、農作業開始の目印となってきました。
こぶしのような? ぶかっこうな実
こぶし、という名前は、その実(集合果)が、拳(こぶし)のようだから、という説が有力です。
こぶしというには、ちょっと細長すぎるような気もしますが、こぶしのようなごつごつとした実をつけます。この不規則なごつごつ感は、花にあるめしべ群のうち、受粉したものだけが成長するから、とされているようです。
この実は熟すにつれて、ピンク色に染まっていきます。鮮やかなピンク色なので、ピンク色の細長いごつごつした実が木から垂れ下がっているのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。
まるでホラー…白い糸「珠柄」を引き、落ちる赤い種
実は熟すと、徐々に、赤い種が見えるようになります。その状態もなかなかインパクトがある見た目ですが、赤い種子は白い糸を引いて垂れ下がるのです。まるで、ミイラから眼が落ちているよう……でしょうか。
束のようになった、その白い糸の正体は「珠柄(しゅへい)」というものです。
いわば、人でいう「へその緒」のような役割をする部分です。珠柄自体は、こぶしに特有なものではありません。例えば、サヤエンドウの粒がくっついている部分をよく見てみてください。あの部分も珠柄です。
こぶしではなぜ、珠柄でぶらさがるのか、はよくわかっていません。
こぶしの種は、鳥によって食べられて散布されるとされています。伸びることで、鳥に食べられやすくなる効果でもあるのでしょうか。
こぶしは、風邪薬としても使われてきた
こぶしの蕾を乾燥させたものは、「辛夷(シンイ)」と呼ばれる生薬として使われてきました。
辛夷は、コクラウリンという有機化合物を含んでいます。沈静・鎮痛効果や、抗炎症作用などがあり、漢方薬として風邪による頭痛や鼻炎などに使われています。
木材としては淡い黄色で、茶室などに使われてきたとか。木炭にして、金や銀の研磨にも使われてきたようです。
日本の生活には、いろいろなところに関わるのが、こぶしの木なのですね。
公園や街路樹、庭木としても、いろいろなところに植えられていますから、ぜひもふもふの冬芽、そしてホラーのような実を実際に見てみてくださいね。