謎の“赤い虫” カベアナタカラダニ

数匹のカベアナタカラダニの写真

ゴールデンウィーク頃のよく晴れた日、“真っ赤な虫”がコンクリートの上を動き回る……。こんな様子をみたことはありませんか? 私(伊原)も最初に見たときは、大量の赤い虫がベランダ上を動いていて、びっくりしたことを思い出します。

小さいので、体の構造などは見にくいと思いますが、この真っ赤な虫は、「カベアナタカラダニ」という生物で、昆虫ではなくどちらかというとクモの仲間です。体長は0.5~1.0mmくらい。4月下旬から6月くらいに、コンクリートや家の外壁、塀の上などを動き回るようすがよく見られます。

コンクリートを食べる?

コンクリートの上によくいるので、コンクリートを食べているのではないか、と思う人もいるかもしれません。実際にはカベアナタカラダニは、花粉や小さい虫を食べます。コンクリートの上によくいるのは、コンクリートの微細な穴に入った花粉やコケなどを食べているのではないか、と考えられていて、コンクリートを食べているわけではないようです。

発見されるのは、全部メス

カベアナタカラダニ、日本では1980年代から急に全国で見られるようになりました。その色から、不快に思う人も多くいるようで、市町村への問い合わせや、駆除依頼などもあるといいます。

全国的に生息しているのでカベアナタカラダニの観察例はたくさんありますが、発見されたカベアナタカラダニは、全部メスなのだそうです。

そう、オスの発見例はないのです。

メスだけでどうやって子孫を残すのだと思うかもしれません。カベアナタカラダニを調べる研究者は、おそらく単為生殖しているのだろう、と考えているようです。つまり、メスだけで子を作っているということになります。

カベアナタカラダニは姿をあらわしたあと、5月頃には卵を産んで、すぐに死んでしまいます。そのため、7月になるとぱたっとその姿は見られなくなります。そこまではわかっているものの、カベアナタカラダニの生態については、まだまだ不明な点も多く、謎に包まれた存在です。その生態が気になりますね。

基本的には、人を噛まない

カベアナタカラダニは、基本的に人を噛むことはありません。主な害は、布団や洗濯ものについているのを知らずにつぶしてしまって、赤く染まってシミになってしまう、ことでしょうか。洗濯物についているところを見つけても、そっととりのぞいてつぶさないように気をつけましょう。

ダニにしては大きいサイズですし、興味があればぜひ観察してみてください。いろいろ発見があるかもしれません。季節限定なので、ぜひ探して見ましょう。

追記:2018年4月20日ごろに都内で発見しました!

赤い虫の基本情報は

  • カベアナタカラダニ
  • 分類:ダニ目タカラダニ科アナタカラダニ属
  • 種名:Balaustium murorum
  • 体長:0.5mm〜1mmほど
  • 体色:赤
  • 食性:昆虫、花粉など多様

最初に少し書きましたが、ダニは節足動物の中でも、クモ類に分類され、大きくいうと、クモの仲間です。ダニは、昆虫のように脚が6本ではなく、クモのように脚が8本の生物です。その体長は、マダニの仲間のように1cmを超えるものから、1mm以下のものまで存在します。

ダニというと、動物の血を吸うというイメージがあるかもしれません。ダニに刺されて、という話はよく聞きますね。確かに、マダニやイエダニなどのように、私たちの身近に生息するダニは血を吸うものもいます。でも、カベアナタカラダニのように、小さな昆虫を食べたり、花粉を食べたり、他にも果物を食べたりするものもいて、ダニの仲間も多様で、食性は種類によってさまざまなです。大きさもダニの仲間は世界に1万種以上いるとされています。

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【×】カベアカタカラダニ
【○】カベアナタカラダニ
誤りが3ヶ所あります。

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