虫好きな伊原がその魅力をお届けする今日のむし。
今日は「テントウムシ」です。
春,そろそろナナホシテントウの幼虫に出会う季節ですね。以前,採取した幼虫を家で成虫になるまで育てていました。癒しの存在です。簡単な準備で育てられるので,伊原的には観察におすすめな虫です。
ナナホシテントウの幼虫は,アブラムシ(アリマキ)の集まったところを探すと見つけやすいです。
ナナホシテントウの幼虫はアブラムシを食べるんです。アブラムシは草の葉の裏や茎などに集まっていることが多いので,ちょっとした茂みで探すと,よく見つかります。都心でも見つけることができますよ。サイズは5mmくらい。黒い姿で誕生し,脱皮を繰り返すと体にオレンジ色のラインが入ります。ハルジョオンが生えているところなどが探すポイントとしてはおすすめです。
アブラムシは草の汁を大量にすって,おしりから甘い汁を出す虫です。アリがその甘い汁を吸いにくるので,アリも集まっていることもあります。アリは天敵からアブラムシを守る役割も果たすので,アリがいるとテントウムシの幼虫は見つかりにくいかもしれませんね。
幼虫は使い捨てのビニールコップなどに入れて,細かい網や細かく穴を開けたビニールなどで覆います。呼吸のための空気を入れることと,逃げられないようにすることを考えれば大丈夫。えさ用にアブラムシを葉っぱごととってきて入れれば育てられます。成虫もアブラムシを食べます。成虫になると1日に100匹も食べることもあります。
サナギから羽化したばかりは,黄色です。その後,羽が乾くにつれ,星が見えるようになっていきます。
てんとう虫が害虫だと思われがちなのは,おそらく「ニジュウヤホシテントウ」のような種類がいるせい。ニジュウヤホシテントウは,ナス科の植物の葉を食べます。ナスやじゃがいもなどです。けっこう大食漢で,食べ荒らされ網目状に残された葉は枯れてしまうので,やっかいな存在です。
ニジュウヤホシテントウは名前の通り,背中に星が28個あります。しかも細かい毛が生えているので,見ると表面が少しふさふさしているのがわかります。幼虫も成虫も葉を食べるので,もし育てている野菜についているのをみかけたら,取り除かないといけません。
肉食のナナホシテントウ,植物色のニジュウヤホシテントウ。
もう一つ面白いのが,菌を食べるテントウムシ「キイロテントウ」です。名前の通り,透き通った黄色の羽をもつテントウムシです。キュウリの葉についたうどん粉病の菌を食べます。いわばカビを食べるんですね。葉は気付けることなくカビだけをたべるきような虫。うどん粉病を広がらないようにはできても,全部食べきって治すことはできないようです。でも,野菜や果物にとっては力強い味方ですね。
ほかに,星が二個だったり,星の数が多いけど表面がツルツルだったりしたよく見るテントウムシは「ナミテントウ」です。ナミテントウは,ナナホシテントウと同じように,アブラムシを食べる肉食です。
テントウムシの星がついた硬い羽(さやばね)は,身を守るためのもの。飛ぶときは,内側の膜上の羽(後ろ羽)を使います。
内側の羽は,折り畳まれて収納されています。飛び立つときには拡がってピンっとのびて,力強く羽ばたくことができます。うまくできていますね。
最近の研究では,羽には折り線のようなものがあって折り紙のように,たたんだりのばしたりが効率的にできるようになっているそう。それによって,さっと飛び立つことができるんですね。
参考
・『テントウムシ』あかね書房
・東京大学「テントウムシのはねを折り畳むメカニズムを解明」